遺伝子の発現
パーソナリティを形成するうえで、遺伝と環境はどちらも重要であるというのが事実です。
そこで、それらがどのようにして結びつき、自分という人間をつくっているのかを説明します。
遺伝子がその効果を発揮することを発現と呼びます。
まず知っておいてほしいことは、遺伝子はすべて発現するわけではないという事です。
例えば、あなたがAという遺伝子を持っているとします。
しかし、遺伝子Aを持っている事と、遺伝子Aが発現することは別の事です。
特定の条件が満たされなければ、遺伝子Aは眠ったままであり、個性として発揮されることはありません。
それでは、遺伝子が発現することを誘発するものは、いったいなんでしょうか?
それが環境です。
遺伝子が発現するかどうかは環境で決まる
このようなことを知ると遺伝か環境かという、間違った二者択一思考から抜け出すことができます。
双生児研究法
遺伝と環境の影響は、双生児研究法が有名です。
双生児には、一卵性双生児と二卵性双生児があります。
一卵性双生児は遺伝的に完全に同一ですが、二卵性双生児は同時に生まれたきょうだいです。
そのため両者は遺伝子の共有率が違うのです。
双生児研究は、この違いを利用します。
前述のとおり、一卵性双生児は100%の遺伝子を共有しており、二卵性双生児は50%の遺伝子を共有しています。
どちらの双生児も一緒に育てられた場合、一卵性双生児と二卵性双生児の類似性の違いは遺伝によるものと考えることができます。
この双生児研究によって、IQの遺伝の影響が明らかになりました。
一卵性双生児のIQの相関係数は0.90に対して、二卵性双生児の相関係数は0.50と、有意に低かったのです。
一緒に育てるため環境に違いが出ないと考えると、IQは遺伝の影響を受けていることが明らかになります。
こうして、IQは遺伝するという結論が得られました。
また別の研究で、親から子へのIQの遺伝率は50%という事も明らかにされました。
遺伝率50%という事は、半分が遺伝、半分が環境です。
環境が遺伝に与えた影響でもっとも大きなものは、一卵性双生児間のIQ差が、24(112対96)です。
同じ遺伝子にもかかわらず、24ものIQ差が生まれたのは、施す教育レベルの違いによるものという報告されています。
IQに良い影響をもたらす優れた教育が待望されるばかりです。
養子研究法
遺伝子は環境の影響を受けて、どのように発現するのでしょうか。
今回は、養子研究法を紹介します。
養子は養い親との血縁関係はないですが、直接養育を受けます。
一方、養子の本当の父親は血縁関係はありますが、子どもと接する機会がありません。
したがって、養子と養い親、養子と本当の父親のIQの相関の推移をみれば、遺伝についての知見が得られるというわけです。
養子と養い親は、環境のみを共有した親子です。
したがって、養子が幼いうちは、ある程度のIQの類似が見られます。
例えば、知的な親に養育されれば、養子のIQも高くなる可能性が大きいです。
しかし、養子が成長すると、この相関はだんだん薄れてきます。
養子が青年期になると、養い親とのIQの類似性はまったくなくなってしまいます。
養子と本当の父親の相関はどうかというと、養子が幼少の頃こそ相関が低いものの、成長するに伴って相関係数が高くなります。
養子が一定の年齢に達すると、一緒に暮らしている普通の親子間の相関係数との差が見られなくなります。
遺伝と環境の相互作用
養子は成長するにつれて、血縁関係のない者との類似性を下げ、血縁関係のある者との類似性を高めていきました。
しかも、養子自身が直接接しているかどうかは関係なくです。
IQの遺伝と環境の相互作用について、次の事が分かります。
遺伝子は徐々に発現する
養子は青年期になると、養い親との類似性はなくなります。
これは、遺伝子が生まれたときに発現しきってしまうのではなく、少しずつ発現するものであることを示しています。
遺伝子の発現は、養育者との類似とは関係がない
環境を共にしているからといって、養子と養い親のIQが類似するという事はありませんでした。
むしろ自身の過ごした環境が、自分らしさを形成するカギとなります。
環境に適応するために遺伝子は発現する
遺伝子は、様々な環境に対応するために自律的に発現します。
ですから、遺伝が環境を導くということも十分考えられます。
遺伝子が環境を誘発する
環境が遺伝に影響する事は分かりましたが、遺伝は環境に対してどのように作用するのか
このことについて、一卵性双生児を例にして説明します。
一卵性双生児は、ふつうのきょうだいと比べ、周囲に似た環境を作りやすいという研究結果があります。
街中で、おそろいの服を着た双子ちゃんを見かけたことは何度もあると思います。
服だけではなく、同じ習い事に通うなど、いつも一緒に行動しているのが普通です。
このような環境の一致は、見た目が似ており、周囲に同じような働きかけをすることが関係しています。
つまり、遺伝が環境を誘発し、それによってさらに似た遺伝が見られるという相乗効果があるのです。
このような例は、一卵性双生児以外にも見られます。
先ほど養子研究について説明しました。
幼少期は、周囲から与えられた環境のなかで生活します。
養子の場合は特に、それが自分の遺伝とは関係なく存在します。
しかし、成長は環境選択の機会を増やします。
「誰と仲良くなる」「習い事を始める」「部活を始める」など、そこには当然自分が好む選択があります。
しかし、どのような選択をしたとしても、それ自体が遺伝によって方向づけられたものです。
これが、成長するごとに血縁関係のない者との相関が低くなった本当の理由です。
このようにして、環境が遺伝子の発現に関係しているだけではなく、遺伝も環境を選ぶことに預かっています。
むしろ、環境がいっそう強く遺伝の影響を色濃くすると言えます。
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