自分を決める2つの要因
すべての人間は、固有の内面、外見を持っています。
自分で意識して別人のようになるのは、かなり難しいことです。
なぜなら、自分という存在は次の2つの影響を強く受けているからです。
遺伝と環境
まずは、両者について簡単に説明していきます。
遺伝とは、親のDNAが子へ受け継がれることです。
人間は46本の染色体を持っており、その中にDNA(遺伝子)があります。
DNAが両親から子へ、23本ずつ受け継がれます。
ですから、親子は50%の遺伝子を共通して持ち、残り50%がオリジナルの遺伝子となります。
環境とは、自分を取り巻くすべての他者です。
すなわち、家族・友達・学校・社会などが環境であり、これらが私たちの個性に影響を与えています。
環境の中でも一番影響力があるのは、母親をはじめとする育ての親です。
幼いうちは特に、育ての親の影響を大きく受けます。
その後成長して学校に通うようになると、先生や仲間からも大きな影響を与えます。
このように私たちの個性は固定的なものではなく、必ず遺伝と環境の影響を受けます。
しかし、遺伝と環境がどの程度個性に影響するかは、あまり知られていません。
したがって、個性を活かした本当の教育は、世の中に全くと言っていいほど出回っていません。
IQの相関係数
すべての個性のおおもとには、DNAがあります。
DNAは、4種類の塩基が結びついて、二重らせん構造をしています。
この結びつき方を塩基配列といいますが、塩基配列の違いによって個性が生まれます。
ちなみに、世界は広いと言えども、塩基配列が完全に同じ人間は存在しません。
1つだけ例外があるとすれば、一卵性双生児です。
一卵性双生児は、塩基配列がまったく同じなので、環境の違いが少ない幼少期、子ども時代は酷似するのです。
一方、二卵性双生児は普通のきょうだいと変わらず50%しか共通しておりません。
この違いを利用して、遺伝の影響を割り出す実験が双生児実験です。
2つのものがどれだけ似ているかを表す概念を、相関係数といいます。
似ていることを正の相関があると言い、0から1の間の数字で表されます。
この数字が大きいほど、「似ている」という事になります。
IQが遺伝と環境の影響をどれだけ受けるかについて以下の結果が知られています。
一卵性双生児
同環境で育てられた場合 約0.90(TOP)
異環境で育てられた場合 約0.80
二卵性双生児
同性 約0.55
異性 約0.50
きょうだい
同環境で育てられた場合 約0.50
異環境で育てられた場合 約0.50
親子
約0.50
養い親と養子
約0.20
血縁関係のない者通し
同環境で育てられた場合 約0.30
異環境で育てられた場合 約0.00(UNDER)
遺伝と環境についての考え方
さて、最も相関係数が高いのが一卵性双生児で、低いのが血縁関係のない者通しという結果になりました。
一卵性双生児双生児(同環境)の相関係数0.90というのは、同一人物の再検査と同じくらいの高さです。
遺伝も環境も違いがなければ、IQはほぼ同じになるという事が分かります。
もちろん、一卵性双生児であっても、育てられる環境が違えば、IQはその影響を受けています。
しかし注目するのは、それでも相関係数0.80と非常に高く、同環境で育てられた二卵性双生児やきょうだいより似ているという事です。
遺伝がIQに与える影響の大きさが分かります。
二卵性双生児、ふつうの兄弟姉妹、親子では、相関係数が約0.50となっています。
これは、約50パーセントの遺伝子が共通している事が大きな理由です。
驚くべきことに、違う環境で育てられた場合でも相関係数はあまり下がりません。
ここでも遺伝の影響の大きさが分かります。
養い親と養子では相関係数は0.20、血縁関係のない(同環境)では相関係数0.30でした。
彼らは遺伝的には赤の他人なので、環境のみを共有しています。
同じ家に住み、同じ教育を共有するなどすると、IQの相関が見られるということです。
全体を通して言えることは、IQに関しては、遺伝の影響力がとても大きいという事です。
しかしながら、「遺伝と環境のうち、どちらの方が影響が大きいか」という考え方自体が教育的ではないですし、正しくもありません。
なぜなら、遺伝と環境は相互作用して効果を発揮するからです。
そこで、その相互作用のしかたについて迫っていきたいと思います。
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